CMプロダクションやSNSコンサルティング会社を経て、LUCK株式会社を設立し、動画、書籍、新聞広告などのグラフィックデザインからSNSでの広報戦略まで、幅広いクリエイティブの企画・制作を担当しているLUCKの砂田智香さん。2022年からは、東京都港区区長室の広報戦略支援員としても勤務している。
今回は、LUCK株式会社 代表取締役兼デザイナー、そして港区区長室広報戦略支援員の三つの肩書きを持つ砂田智香さんに、パラレルワーカーとしての働き方・仕事内容について話を聞いた。(取材・文:LUCKインターン生 池田遥)
代表・デザイナー・公務員の「パラレルワーカー」の働き方
——智香さんのお仕事について教えてください。
現在は、いわゆる「パラレルワーカー」の働き方をしています。
LUCKは小川凜一さん(以下、小川さん)とは、夫婦2人で切り盛りしている小さな会社ですが、LUCKの代表としてマネジメント業をしながら、自分で手を動かしすデザイナーとして働くというのが、メインの仕事です。
また、週に1回は港区区長室の広報戦略支援員として勤務しています。こちらは、公務員として、港区の広報をする役割です。
——二足の草鞋を超えて、三足の草鞋ですね・・・!(笑)
そうですね(笑)でも、今後も社長業とデザイナー業を兼務しながら、LUCKは小川さんと2人の会社のままにとどめておきたいと思っています。
——今後も基本的にはお2人の会社のままの予定なのですね。なぜですか?
今まで、いろいろな企業で働いてきて思ったのですが、会社が大きくなればなるほど、その代表や役員は「自分の会社のことが見えづらくなってしまう」と感じました。それぞれの部署の取り組み、そこで働いている人、どんなお客さんがいて、どんな課題を解決していて・・・など、どれほど優秀な人でも全てのことに目を通すには限界があります。大きくなればなるほど、誰かに仕事を任せないといけないし、その分社員やお客さんと関わる時間は減ってしまいます。
LUCKでは、自分の裁量でお客さんが「本当にやってほしいこと」に一対一で向き合って仕事ができます。新しいことにチャレンジするかしないかも、自分で決定することができます。もちろんその分、自身が全ての責任をとらないといけないのですが、柔軟にスピード感を持って対応ができることが「小さな会社」の持つ個性であり、良さだと思っています。
お客さんと向き合うプレイヤーであり続けたい
——なるほど、では智香さんは経営者でもありながら、デザイナーであり続けたいということでしょうか?
そうですね、私はあくまでプレイヤーでありたいと思っています。
経営は、基本的に利益を上げるための方針を旗振りする人、
プレイヤーは、デザイナーのようにお客さんやスタッフと関わって、自分の手を動かして仕事をする人だと思っています。
——プレイヤーとして働くことに、やりがいを感じているんですね。
そうですね。イメージとしては、LUCKは「小さな村の診療所」に近いかもしれません。
大きな大学病院は、内科とか外科とか、それぞれ専門性の高いお医者さんが大勢働いて、診察する先生と手術する先生が違ったり、毎日患者の症状をチェックするのは看護師さんだったりしますよね。けれど、小さな村の診療所だったら、お医者さん一人がきっと村人全員の診察から治療まで、近い距離感で関わることができますよね。
私は大きく会社を成長させて事業を広げていくよりも、小さな村の診療所のように、お客さん一人ひとりの課題と向き合っていくことが、とても楽しいと感じています。
「みんなが使いやすいデザイン」を作りたい
——デザイナーとしてお客さんと仕事をする中で、どの瞬間が一番楽しいと感じますか?
お客さんは、デザインやクリエイティブを作ることも「はじめて」のこともありますし、実はお客さん自身がそもそも何に困っているかも分からない場合が多いです。
「なんか使いづらい・・・」「もっと子ども向けにしたい」みたいな具合で困っていることも曖昧な場合も多いです。
例えば「子ども向け」という一言でも、ターゲットや目的、デザインの雰囲気などによって無限の方向性が考えられます。それをお客さんと対話していく中で、「本当にやってほしいこと」を掴んでいきます。そして、私がビジュアルとしてお見せした時に「これこれ!」と納得してもらえた瞬間が一番楽しいなと感じるんです。
——お客さんに「ハマった瞬間」が楽しいんですね。
デザイナーって様々なタイプの方がいると思いますけど、私は確固たる意思やこだわりがあるタイプのデザイナーではないかもしれません。「みんなが使いやすいデザイン」「誰かの困りごとを解決するデザイン」を作りたいんです。あまり自分の特色や作家性はあまりない方だと思います(笑)
だからこそ、「困りごと」に対してできるだけ多くの引き出しを使って、アプローチをかけていったり、最終的に見る人が使いやすいデザインが出来上がることが一番楽しいです。
——智香さんはどのようにたくさんの引き出しを培ったり、お客さんの「本当にやってほしいこと」がわかるのでしょうか?
私は今に至るまでに、プロジェクトマネージャー、SNSコンサルティング、デザイナー、映像編集など、様々な仕事をしてきました。悪く言えば中途半端で何かのプロフェッショナルではないかもしれないのですが、いろんな仕事をしてきたことで、課題ごとに違ったアプローチやノウハウが使えるし、異なる立場の人の気持ちがよくわかるようになりました。
それが今の、マネジメントやデザインなどを行う「マルチプレイヤー」の働き方に活ききているのだと思います。
——なるほど、マルチプレイヤーだからこそ様々な考えをもつ方と一緒に仕事ができるんですね。
行政のお客さんと仕事をしたり、区長室の公務員として働いていると「業者の言っていることがわからない」とご相談をいただくことがあります。
例えば「Webサイトのコーディングが〇〇で〜」とか「SNSの効果測定するなら〇〇が必要ですよ」などと言われても、それらに触れてこなかったお客さんにとっては、初めて聞く言葉だったりします。
私たちのようなクリエイティブを作るの人や、専門性の高い仕事をする人たちは、実はこういった『自分たちが分かる言語』や『自分たちのやり方や常識』を長く同じ業界にいるうちに『当たり前』だと思って、自分たちの領域以外にいるお客さんにも、そのまま伝えてしまって、説明もしていないことがあります。
だからこそ、私たちは行政や民間など、さまざまな考え方をする人々を繋ぐ際の「橋渡」になれるかもしれないと思っています。
マルチプレイヤーとして、繋がったことのない業界同士をつなげたい
——「橋渡」として何かと何かを繋ぐ役割ができるということですか。
私は、何か特別なプロフェッショナルとしてずっと同じ業界にいたわけではないのですが、今までいろんな業界や職業の人たちと関わってきました。
だからお客さんから課題を伺った時「こんな人に相談したほうがいいかも」など、LUCKでできること以外のアイデアを出すこともできます。そして、繋がったことがなかった人同士や業界同士と協力して、一緒に完結まで伴走することができるので、今後いろんな人と一緒にものづくりをやりたいなって思っています。
——小学校で行われている「キラリモンスターの授業」もその一貫ですか?
まさにキラリモンスターの授業は、小学校の先生達と対話しながら、一緒に作りあげたものです。これまで学校教育現場は閉ざされたところで、私たちのような民間企業が関わるきっかけはほとんどありませんでした。しかし現在、民間企業が築いてきたノウハウや学びも、教育現場に取り入れてみたいと広い視野で子どもたちの学びや体験を深めていこうとする学校がたくさん出てきています。
そういった学校の先生方との架け橋になることで、学校側に新しい体験や考え方を提供し、私たち自身も子どもたちから得た学びやノウハウをまた別の行政やお客さんへの仕事に活かすことができます。
「キラリモンスターの授業」の活動報告はこちら
書籍『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』の詳細はこちら
——LUCKは特に「子どもたち」にも支援を行っていますよね。
そうですね。子どもたちが未来を作っていく。教育は次の人に繋げることなので、とても大事だと思います。
また、私は大人と子どもにはあまり差異がないのではないかと思っています。理解したり、学んだりすることに、年齢はあんまり関係ない気がするんです。
「こども六法」を例にすると、六法だって伝え方さえ変えてしまえば、子どもたちにも理解できる方法があるということなんです。そして、子どもは言語自体は知らないけどビジュアルの距離は近いので、クリエイティブを使ってわかりやすく伝えることで、内容を理解してくれたり、学ぶこと自体を楽しんでくれます。クリエイティブが子どもたちに新しい学びや知識を伝えてくれる大きな力になると考えています。
書籍『こども六法』について詳細はこちら
——最後に智香さんの今後の展望について教えていただけますか。
そうですね、今まで通り「みんなが使いやすいデザイン」を作りながら、クリエイティブで子どもたちと違う世界を繋げていきたいと思います。そして、今後はマルチプレイヤーとして、もっと繋がったことのない業界同士をつなげる役割を担っていけたら、と思います。
小学校向けのキャリア教育やクリエイティブに関する学びを深める社会貢献活動の一貫として、
小学校や先生方と協働で授業開発や出張授業を行なっております。
現在、小学校・中学校など教育関連の皆さまからの授業は、
ボランティア活動として授業を行っております。ぜひ、お気軽にご相談くださいませ。
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