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クリエイティブで子どもたちをサポートし続ける 〜小川凜一インタビュー〜

コロナ禍において学校行事が中止、または規模縮小の形で開催する学校が大半を占めた2020年度。

学生たちにとって文化祭という一度きりのイベントがなくなってしまうことの危機感を感じたLUCKが、「日本全国を巻き込んで、オンラインで繋がる新しい学生祭をしよう」と多摩生徒会協議会の高校生らに提案し、『全国オンライン学生祭』プロジェクトが始動。

株式会社LUCKは、高校生主催の『全国オンライン学生祭』の企画・運営を全面的にサポートし、Webサイト制作・ライブ配信などのプロジェクトマネジメント及びクリエイティブ制作などを行った。全国規模のオンラインでの学生祭の開催に至った『全オン祭』の指揮を取った、小川凜一に話を聞いた。(取材・文:LUCKインターン生 池田遥)



高校生活の中で一番今に活きているのは、文化祭。

——今回どのような経緯で『全国オンライン学生祭(以下、全オン祭)』の開催に至ったのでしょうか。

ある時、多摩生徒会協議会が全国の学校の文化祭の開催状況を調べを発信しているのを目にしたんです。多くの学校で中止また規模縮小での開催がされている事実をまとめると共に、「この問題は自分たち生徒会が解決すべき問題だがどうしたらいいかわからない」という正直な気持ちを発信していました。

そこで、足りていないのは、彼らがこの問題を解決できる「場所作り」なのかもしれないと思い、当時の多摩生徒会協議会代表 章子昱さんに連絡をとり、『全オン祭』が動き始めました。


——LUCKはコロナ禍の「場所作り」という点で、経験があったのでしょうか。

はい。コロナウイルスが蔓延して世界が一変した2020年、LUCKはクリエイティブの力でその状況を打破できないかと挑戦してきました。

お店が全て閉まってしまった去年のゴールデンウィークには、バザーをオンライン化して『おうちでバザー』を開催しました。当時、イベントをオンライン化する前例がない中で手探りの状態でやったけれども、たくさんの人が喜んでくれて、『おうちでバザー』で1ヶ月ぶりの収入でしたという人もいました。

そこからたくさんのオンラインイベントの開催についての問い合わせがあり、鳥取で『福祉アートウィーク』というイベントのオンライン化のお手伝いも行いました。

——それまでは大人を中心に、『全オン祭』では子どもたちに目を向けられたんですね。

そうですね。僕自身、高校生活の中で一番今に活きているのは、実は文化祭なんです。バイトは決められた仕事を指示された通りに働いて、お金をもらう。でも文化祭では、お客さんに来てもらう方法やお金をいただく企画を自分たちで考えて、実行する。

僕が高校生の時には、水槽にマカロニを浮かべて見る「マカロニ水族館」というなんともしょうもない企画をやりましたが(笑)、学生が仲間たちと企画をして社会に関わる機会がなくなってしまうのは、ただ単に悲しいだけでなく、機会損失だと危機感を感じたんです。


第1回目のオンラインミーティングの様子

過去を取り戻し、未来に繋げる。

——全オン祭には、どのような目的があったのでしょうか。

目的は二つありました。「マイナスをゼロにすること」そして「ゼロからイチを作ること」です。つまり、過去に失われたものを取り戻して日常に近づけ、そして、変わり続ける新たな生活様式にあう未来につながるイベントにすること、です。


これより前の世代は昔からの生活様式を守ってきてるし、これからの世代は変わってきた生活様式を引き継いでいく。だからこそ、世界が一変し「白紙の状態から考えなければならない機会」は、彼ら学生にとって、この先経験できない貴重な機会にもなりうるのではないか。そう思い、そのチャンスを最大限に生かしたいと思ったんです。

そのために、「子どもたちの教育コンサルタント」と「クリエイティブ制作」という僕らLUCKが持つ二つの強みを生かして『全オン祭』のサポートを行いました。


当時の多摩生徒会協議会代表 章子昱さんは、LUCKが一緒に伴走したことに関して、このようにコメントしています。

LUCKが一緒に企画から本番までサポートしてくれたことで、自分たちの行いたかった活動のクオリティが格段に上がったと実感しています。自分たちには無かった知見を生かした広報や、高いレベルのクリエイティブが取り入れられたこと。また、今まで行ったことのないような規模感の活動を行うにあたって、実現に向けての段取りやスケジュール感を共有いただけたこと。そのような経験のある方がチームに居るだけで、一気に実現可能性が拓けたと思います。

——具体的に、学生が主催だった『全オン祭』でどのようなサポートをしましたか。

大きく分けて4つの「整える」という作業をして、LUCKは場所を用意し、学生達がやりたいことを現実に落とし込みました。

  1. コンセプト設計(イベントの軸となるコンセプトを整える) 

  2. イベント参加者が参加しやすい土台を整える

  3. 学生たちが主導できるルール決め・組織を整える 

  4. 主催する学生たちと参加者が発表する場を整える

全国で繋がる文化祭をしたい!発表の場がないから、作りたい!

じゃあ、「なんでもいいから作品を集めて、全部発表する」という企画はどうだろうか?


当初、このようなたくさんの子どもたちのアイディアが出ました。

これらのアイディアを整え、現実に落とし込む作業を、私たちLUCKが学生たちと一緒にやったんです。例えば、現状の課題と目的はなんだろう?「なんでも」は具体的にどんな部門に分けられるかな?テーマが抽象的だと参加者は集まるだろうか?人はどうしたら参加したいと思うかな?

全国オンライン学生祭 企画書より

また、『全オン祭』では

  • 全国から参加してくれた学生たち

  • 協力者(審査員・出演者)

  • 協賛・協力してくれた企業

  • 視聴者

  • 主催する学生

という、立場も年齢も環境も違う5種類の人々を一つの場に集める必要がありました。

だからこそ、学生たちとオンラインで何度もミーティングを重ね、イベントの目的や目標、コンセプトを明確にして、クリエイティブを作って視覚化していきました。


——学生たちと対等な関係でプロジェクトを進めていったんですね。

そうですね、学生たちはとてもパワフルで、真っ直ぐ僕たちにぶつかってきてくれました。

彼らは自分たちの思い描くイベントの形や企画出しから始まり、僕たちがサポートしながら、企業の営業部や企画部門に直接問い合わせて、協賛企業、審査員、出演者に協力してもらえるよう自分たちで交渉を進めたりもしていました。広報においても、メディアの協力を得たり、毎日の公式SNSの広報を行ったりと、学校生活と並行してイベントの準備を進めていったので、改めて本当にパワフルな学生たちだったなと思います。

——学生たちと活動する中で、苦労した点や悩んだ点はどんなところでしたか。

今回、LUCKはイベントの全面協力という形で、どのように彼らが主体として動ける土台作りとサポートをできるのか、というところにとても苦労しましたね。


学生たちと一緒にプロジェクトを進めることも、オンラインの文化祭という新しい形のイベントを開催することも、学生の彼らはもちろん、大人メンバーも経験したことのない初めての挑戦だったからこそ、全員手探りで進めていきました。

サポートをしながら、彼らが本当にしたいことを引き出し、彼らのやりたいことと現実とのバランスをとることは、難しかったですね。やりたい企画や試してみたいものを守ったことで視聴者や参加者が思うように集まらなかったり、逆に、彼らがやりたいと言っていたけど実現できなかったこともありました。

しかしその一方で、例えば早押しクイズをオンラインでやる生放送する、という前代未聞の新しい企画は、学生たちのアイディアなしでは実現しなかった試みの一つです。


成功、失敗や反省も含めて、子どもたちの学びになっていれば、嬉しく思います。



クリエイティブの仕事は、定義づけをすること。

——株式会社LUCKが、学生たちと共に「全オン祭」を開催した意味はなんだったでしょうか。

最近では、イベント会社が大学生とオンラインイベントを開催したりしています。その点LUCKは、イベント開催のプロではないので、イベントを開催するため必要な全ての技能は持ち合わせていません。ですから、最低限イベントを実行する能力としてはイベント会社の方が適していたと思います。


でも、LUCKだからこそできたことは「定義づけること」でした。


『こども六法』という児童書の時は、イラストやコピー(「君を強くする本」)、まとっている雰囲気やビジュアルで、「法律=難しくて堅苦しいもの」という定義から、「法律=こどもを守ってくれる身近なもの」として定義づける作業をしました。

『全オン祭』では、「学生よ、常識を超え、輝け」という学生が考えたコンセプトを軸に、コロナ禍でオンラインでやらざる負えない学生たちの学生祭を「未来につながるワクワクしたイベントの形」と定義づけました。

もし定義づけをしなければ、「高校生が苦しさを乗り越えるための代わりのイベント」という風に視聴者から見られてしまっていたかもしれません。

LUCKが持つデザイナーやクリエイティブディレクターのスキルを生かして、ウェブサイトやイベントの雰囲気、キービジュアルや動画などのクリエイティブで『全オン祭』を作り上げていくことで定義づけをしたんです。


章さんも、クリエイティブが運営全体のモチベーション維持に大きく貢献していたと感じている。

普段の自分たちのプロジェクトに比べ、明らかにハイレベルなクリエイティブにより、運営一人一人が今関わっているプロジェクトの価値を実感することができました。つまり、クリエイティブによって、モチベーションが生まれたり、全オン祭というイベントを運営するメンバーとしての責任感が高まったと実感しています。また、クリエイティブによりプロジェクトに注目する方も増えるため、運営のやりがいにつながりました。

——クリエイティブは、定義づけをして新しい意味を持たせることができるんですね。

そうですね。『全オン祭』は、困っている学生がいて、彼らのどうにかして自分たちの文化祭を開きたい、そして、今までの文化祭とは違う今だからしかできない次に繋がるイベントを作りたいという思いを、

クリエイティブを通して視覚化したからこそ実現できたイベントでした。

『全オン祭』は、「子どもたちの教育コンサルタントとクリエイティブを作る」の二つができるLUCKだからこそ、実現することができたと思います。



今後も、目が未来に向いている人をサポートし続けたい

——今後も、子どもや学生たちに関わるクリエイティブ制作はしていくのでしょうか。

僕は、子どもが欲しいと思った瞬間に足りないものがあるということに、大人として責任を感じるんです。だからこそ、子どもたちへのサポートは僕たちの大きな活動の一部になると思います。

ですが、僕らは子どもだけでなく、目が未来に向いている人、つまり前に進んでいくために行動したいと思っている人を、今後もクリエイティブでサポートしていきたいと思っています。

——『全オン祭』での経験を経て、よりパワーアップしたLUCKにしかできないサポートをしていかれるんですね。

今後また、世の中がまた大きく変わるかもしれない。

その時に足りないものは、『全オン祭』ではない別のものかもしれない。

だから、僕らはその瞬間瞬間で、必要とされているところにないもの・そこにあるべきなのにないものを、これからもクリエイティブで補っていきたいと思います。

僕ら自身も足りない力や知識を、経験で補って成長していきながら、これからの社会で誰かの足りないものを補う力になれるよう活動していきます。



2021年3月に「第1回 全国オンライン学生祭」開催された翌年、「第2回 全国オンライン学生祭」が開催された。次年度は、多摩生徒会協議会と関西生徒会連盟が主催し、学生ら自ら20社以上の協賛・協力を経て、オンライン配信された。今回LUCKは、全面的なサポートではなく、協賛として関わった。

第2回目では、第1回目に好評だった企画に加え、英会話イーオンの協力を得て行った「英語好きあつまれ!学生の想いをショートムービーに込めろ!」企画や、細田守監督との「未来を担う学生が今できることとは」座談会などを盛り込み、さまざまな新しい企画とともに配信した。学生自らの手で作り上げた「第2回 全国オンライン学生祭」は、全国の学生たちを巻き込んだオンラインイベントとなり、その視聴者数は2,000回を超えている。(2022年12月現在)




小川 凜一 (おがわ りんいち)
LUCK株式会社 / 株式会社アマナ 
教育プランナー 

プランナーとして広告・映像業界で働く中、広告のノウハウが活かせる場はもっと広いことに気づき、教育現場や子どもたち向けのサービスなどにクリエイティブ支援を行う。広告全体の企画・戦略を設計し、プロジェクトのゴールまでの道のりを作り出す。

 

全国オンライン学生祭の開催経緯や成果についてまとめました!

▶︎記事はこちらから


第1回 全国オンライン学生祭 公式ホームページ:https://zen-on-sai.com/

第1回 全国オンライン学生祭 アーカイブ映像:

第2回 全国オンライン学生祭 アーカイブ映像:



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